糖質オフ道楽を始めてから量こそ食べなくなったが食いしん坊である。未知の美味い魚と出会えるから船釣りにハマったといってもよい。先週、ムツの炙り刺の美味さに仰天した。以来1週間ムツ釣りてぇ~、ムツ食いたいと大騒ぎしたが……カゴカマスの美味さはムツを超えた。美味すぎる!!
なんか、妙な魚が釣れたぞと水面に姿を現した魚を手繰り寄せようとしたら針から外れた。得体の知れない魚だし、カモメに食われてもいいやと諦めたら、デカッw船長から「網ですくって、それ、スミヤキ! 美味しいから!!」とマイクで急かされる。わざわざ船を操舵して魚に寄せてくれた。そこまでするほど美味いのかぁ~と魚を見たが、タチウオの顔にサバかソウダガツオの体を付けたようななんともキメラなヤツにしか見えず、本当に美味いの?と半信半疑。一応血抜きをして大事に持ち帰ることに。
東京湾で釣れるスミヤキに関しては評価が二分する。「脂っこいだけで小骨は多いしお腹壊しそう(実際に下痢した)」っていう人がいるかと思えば「すごく上品な脂が乗った魚で少し骨はあたるけど刺身で絶品」って人も。何を美味しいと感じるかは十人十色だったとしてもここまで両極端な感想になるのはおかしい。家に帰って釣魚1400種図鑑を開いてそういうことかと得心がいった。一般にスミヤキと呼ばれている魚はクロシビカマス。へた釣りが釣ったのはカゴカマス。同じクロタチカマス科に属する魚だが属レベルで異種なので食味は全く違う可能性がある。クロタチカマス科にはアブラソコムツやバラムツなど脂が多すぎて食べると下痢を起こす魚も含まれる。
クロシビカマスとカゴカマスの見分け方は簡単で、第一背鰭の前部に黒い斑があればカゴカマス。斑ではなく鰭全体が黒いならクロシビカマス。釣魚1400種図鑑には各魚に食味評価という項目があり、食べられるか否か、食べて美味しいかどうかを判断する目安になる。美味しい順に「極」、「良」、「普」、「不」、「毒」の5段階評価になっている。味には好みがあるので絶対的な評価にはなりようもないが、クロシビカマスの評価は「普」、カゴカマスの評価は「極」だった。「極」評価の魚が不味かったという経験はあまりないので期待が高まる。ちなみにクロムツ、ムツの評価は「良」だ。
最初はムツと一緒に炙り刺にしてみたが、皮際に脂が乗っているという魚ではないようで、この食べ方ではムツの方が美味しい。炙らずにそのままお刺身で食べてたら、これがもう美味すぎて美味すぎてしばらく言葉が出なかった。身全体にほどよく上品な脂が乗っており、まさに白身のトロ。脂にしつこさはない。中トロと並トロの中間くらいの脂の乗り具合。口の中で甘味のある脂がじゅわりと溶けだしてくる。スダチやカボスなど柑橘類の搾り汁を1滴2滴垂らして食べたら絶品だ。白身のトロと呼ばれることがあるアカムツのお刺身も食べたことがあるが、アカムツよりも脂が控えめでさっぱりした感じ。
カゴカマスは狙って釣れる魚じゃないんだろうけど、釣れたらうれしい魚が1つ増えた。羽田・かみやの釣果を確認してみるとライト深場で出船すれば、船中で1匹2匹は釣れている感じだ。クロムツよりレア度は高いけど、アカムツやメダイ、アラよりは釣れる可能性が高い魚のように見える。クロムツとカゴカマスだけを狙って釣る方法ってないのかなぁ?
著者: へた釣り